小分けにして脳内に残っている色々を吐き出そう,ということで「リカンベントを作ろう!」の,Vol.2です。
Vol.1はこちら。
追いかけるにも苦労する当時の生データはこちらから。
Togetter : CFRPで作った自作リカンベント製作記録 ツイートまとめ その1 (着想・構想・設計・準備)
では本編です。そういえば馬鹿々々しいこと言うのですがこの記事を読んで真似して作ってなんか起きても白猫は責任を負いません!
リカンベントを作ろう!という記事を書くにあたって,そもそも作り方を伝えるとして,どこから伝えていけばよいのかとても悩むのです。とりあえず,フレームの設計の話からかな,と思っています。しかしながら,リカンベントのフレーム設計は,乗車姿勢,空気抵抗の低減,BBハイトとシートポジション,シートアングル,アイドラー位置,強度的な設計etc......と,あまりにも多岐にわたる内容が相互的に絡み合ってて,こっちの説明をする際はあっちの話をしなくてはならないし,あっちの説明をするにはこっちの説明が必要だし,と,説明するにも大変難儀なものがリカンベントです。むしろ皆さん何が聞きたいか教えてほしいくらいなので,このコメ欄でも旧Twitterでもいいのでなんか聞いてもらえたら大変助かります。
とりあえず今回は何処から話したらよいか困った末に,「フレームを構築するためには」から話していこうと思います。
まず,そもそもの話なのですが,Vol.1で述べたような,高性能で自分にぴったりの理想的なリカンベントを,「自作」することが出来るのか?という,かなり根本的な話から始まります。
白猫はCFRPのリカンベントを作る数年前に,40mm鉄角パイプを切って,ジャンク自転車を切って刻んで,溶接してくっつけて作った,激重リカンベントを作った経験がありました。
LUNAR.MODULE. : Bicycle > 試作一号車
上記リンクのこいつです。シートなんかFRPでさえなくて,乗れれば良かったので,もはや木製です。
この記事を読んでもらえれば、何故こうなっているのかわかるかと思います。(わかるか) とにかく,試作1号車を作ることが出来たわけだし,どうにかすればリカンベントが作れるのではないかと思っていたわけです。
しかしながら,当時作ろうと思っていたリカンベントは,自分の理想を詰め込んだ,超高性能なリカンベントだったわけです。(馬鹿)
少なくとも,この当時,フレーム買って組み立てて乗っていたTsunami2026よりは高性能なものを作ろうと考えていました。それはつまりマスプロ越えです。よって,上記のような鉄角パイプなんて物を使うのはもってのほかでした。
なので,色々考えあぐねた結果,当初はクロモリ鋼のパイプを溶接して作ろうか,と考え始めました。国内にはクロモリパイプとスチールラグを用いてフレームを作る趣味の個人ビルダーが結構いて,旧Twitter上でもそういった方々と交流もしていたので,出来そうとは思いました。しかしながら,クロモリパイプのような金属素材をゴリゴリ削り,超高温になる溶接機で繋ぎ合わせるのは,6畳の狭い家の自室でやるのは到底,無理でした。
なので,白羽の矢が命中したのが「CFRP」でした。CFRPを丁寧に言うと, Carbon Fiber Reinforced 「Prastic」 そう,プラスチックです。プラスチックならば,プラモデルです。プラスチックを加工し,接着剤でつなぎ合わせることが出来れば,フレームとして成り立たせることが出来るのではないか,と考えたわけです。先駆者くらいいるだろう,と思ってインターネットで検索してみると,案の定CFRPを使ってロードバイクを自作している猛者がたくさんいらっしゃいました。先駆者がたくさんいたので,どうやらCFRPで作ることは個人でも可能みたいだ,ということはわかってきました。しかしながら、リカンベントのような長ーいフレームを一発で成型することは,いくらなんでも当時の自分の環境では無理でした。
どうにか作れないか悩んでいたころ,とある自転車ショップに入った時,この自転車を発見しました。
BMC Impec です。これが最新モデルとして華々しく飾られていました。このCyclowiredの記事投稿日は2010年です。カーボンフレームが主流になってきたころでしょうか。このフレームは,カーボンパイプを,カーボン繊維強化プラスチック製のラグを使って,接着剤にて繋ぎ合わせて製造されたものです。カーボンパイプとラグを別個に製造することで,それぞれの工作精度を高め,それらをつなぎ合わせれば,より良いフレームを作ることができる,というわけです。今でこそ,製造技術が発達したおかげで,カーボン繊維強化プラスチック製ラグなんて使用しなくても,一体成型でフレームを製造することができるようになってますが,この当時はまだ過渡期の部分があり,こういったフレームが存在したわけです。
このフレームを見て,ひらめいた訳です。「CFRPで作ったラグでCFRP製のパイプを接続すれば,ラグドフレームのクロモリロードのようにフレームを作れるのではないか。」と。
フレーム全体を一気に成型することは個人では難しくても,パイプ同士を接続するラグ程度の大きさであれば,小さい机の上でも製作が可能であり,十分精度を出せるのではないか,そして,カーボンパイプならば業者に注文して作ってもらえれば,自作しなくても高品質なカーボンパイプが手に入るのではないかと,踏んだわけです。別個にして思考すれば,自作への道にたどり着けるのではないかと。
そうなると,まず,個人の狭い自宅で人間が乗れるほどの強度があるCFRPは生成できるのか,という問題に直面します。白猫はラジコン飛行機や模型飛行機なども好きなので,それらの製作方法について調べたりするのですが,覚えていた記憶の中に,「バギング製法」という方法がありました。実際に材料と道具を用意し,テストピースを作り,強度試験をしてみると,小さなテストピースでも人間が乗ったところでビクともしない,大変強度のあるCFRPピースが出来上がりました。本来であればプリプレグを使いオートクレーブで焼成してCFRPは作るのですが,低温でも性能の出る樹脂を使って炭素繊維を積層すれば,高強度のCFRPは作成可能だという事が判りました。
その方法はこちらをご覧ください。
ということで,大変強度のあるCFRPは小さな机の上で作ることが出来る事が判明しました。

主だった難関は何とかなりそうだったので次は図面を起こします。上記の背景を踏まえながら図面化したのがこれです。LiliumⅠです。色々思考した結果の最初がこれです。
LiliumⅠはトラス構造のスタッガードフレームのような構成です。某Nakagawaのリカンベントを真似ています。信頼性のある形をまずは真似ようと思ったのです。ですがそれだけでなく,この構造には訳があります。LiliumⅡでは単管パイプ構造なのに,なぜLiliumⅠはトラス構造なのかというと,
その1「単管パイプ構造に不安があった。」
からです。当時マスプロ製の有名なリカンベントで,単管パイプ構造のリカンベントのいくつかにおいて,シート下のパイプ部分に亀裂が入って折損したり,クラックが入ったりしているという話がちらほらあったため,不安感が拭えませんでした。そもそも,自分が構想している製作方法で,単管パイプ構造を乗り物として成り立たせられるのか,とても不安だったので,LiliumⅠでは見送りました。
その2「単管パイプ構造だと,ラグのサイズが大きくなって作ることが出来ない。」
です。CFRPを作る際は,まず型を作らなくてはなりません。LiliumⅠで最も太いパイプはφ35mmです。この程度なら,木製などの素材で手作りで型を作ることが出来そう,と考えたわけです。単管パイプ構造だと,メインフレームのパイプ径がφ50mm以上でないと強度的に心配です。よって,直径の大きい型を作ることは当時は難しいと判断しました。
「あれ,LiliumⅡは3Dプリンターで型出力してたじゃん。LiliumⅠもそうなんじゃないの?」と思った白猫リカンベントのフリークスのあなた,LiliumⅠは3Dプリンターで作った型ではないのです!当時,3Dプリンターは高価で手が出せないし,難しいものだと考えていたのです。この頃は3Dプリンターもメジャーになってきたな,程度の時代ですから,まだまだ高価な機材で,今ほど気軽に使おうなんて考えていなかったのです。では,LiliumⅠでは何を使って型を作ったかっていうと,

石膏です。容易に型が取れて成形も簡単。型に積層した炭素繊維とエポキシ樹脂が固まって,CFRPが出来てしまえば,石膏型を割って取り出すことが出来るという,合理的なようで無茶苦茶な方法をとっていました。

こういう感じで,石膏にて型を起こし,塗料などで離型処理をしてCFRPの型としました。CFRPのラグを成形し終わるたびに石膏の型を突き崩して取り出すため,ボロボロに崩れ,作業台が石膏まみれになりました,表面の見た目もお世辞にもきれいではありませんでした。ですが,テストピースを作った段階では精度よく大変強度のあるCFRPのテストピースが出来ましたので,上手くいくと確信しました。流石にLiliumⅡではこのやり方に懲りまして,3Dモデリングソフトと,3Dプリントサービスを使って出力してもらった型を使って作り上げました。
ということで、素材としてCFRPを使い,フレームを作ることはどうにか可能のようだ,ということを確かめることが出来ました。
次に問題になってくるのは,リアディレイラーのハンガーをどうやってつけるのか,BBシェルはどうするのか,シートを取り付けるためのダボ孔や,ブレーキを取り付けるための孔をどうするのかといった,様々なパーツをどう取り付けるか問題に直面しました。
当初最も悩まされたのは,BBシェルをどうするか,です。これは実は案外あっさり解決しました。この当時ロードバイクのBBの規格が様々に乱立し始めており,他社製のBBを取り付ける,アルミ製のアダプターが市販され始めていたのです。「FSA BB アダプター」なんかで検索すると,アルミ製のアダプターが出てきます。これをCFRPで固めて取り付ければBBを取り付けることが出来ると判断しました。結局,下記写真のように解決することができました。
リアディレイラーハンガーは,リプレース用として売ってある,ロードバイク用のディレイラーハンガーを流用しました。エンドにハンガーが取り付けられるように作ったわけです。

シフトケーブルやブレーキケーブルは全て内装式にしました。

フレーム内をアルミパイプが通り,その中にライナーが通り,その中をケーブルが通ります。フレームそのものがケーブルの受けとして機能するので,きちんとシフトもブレーキも動作します。一見外装式のほうが設計は簡単そうですが,取り付け方を考えてみると,小さなケーブル受けをフレームに接着剤で取り付けるという,強度的にも不安な方法になります。また,長いフレームの前から後ろまで外装式にするのは見栄え的にも強度的にも好ましくありませんでした。よって,LiliumⅠもⅡも内装式になっているのです。決して空力などを考慮して内装しているわけではなく,そっちのほうが作りやすいから,です。
ほかにも,様々なパーツをどう組み合わせていくのか,ということを考えながら図面と格闘した結果,「市販品を組み合わせればどうにか作れる」事が判明しました。
最後はフレームのメイン素材となるカーボンパイプです。どこかの会社に,指定した径と肉厚の,長尺のカーボンパイプを作ってもらわなければなりません。複数のメーカーに見積もりを出したところ,1社だけ,低価格で1本からカーボンパイプを受注してくださるメーカーさんが見つかりました。個人からなのにもかかわらず,です。
カーボンパイプを作るためには,アルミ製のマンドレルと呼ばれる棒状の物が必要だそうですが,ここは様々な径のマンドレルをたくさん保有しているそうで,安価にカーボンパイプを作ってくださいました。
他にも,カーボンフレームを作るには上記内容だけでなく,他の様々な要素がもっと沢山あるのですが,説明していると大変な量になります。読み取りたい方は上のリンクにあるTogetterのまとめのほうを追っかけてください。
ということで,狭い個人宅でリカンベントのカーボンフレームが作れそうだ,という算段が整ったのです。
フレームそのものはアイデアと代用を,構成するパーツ類は市販品で合致するものを,これまで見知ってきたありとあらゆるジャンルの知識の中から,知恵と工夫で解決法を見つけ出して設計図に落とし込んでいけば,狭い個人宅で,リカンベントのカーボンフレームをどうにか作ることが出来そうだ,という一筋の光が見えてきたわけです。
Vol.3につづく。