小分けにして脳内に残っている色々を吐き出そう,ということで「リカンベントを作ろう!」の,Vol.3です。
以前の記事はこちら。
追いかけるにも苦労する当時の生データはこちらから。
Togetter : CFRPで作った自作リカンベント製作記録 ツイートまとめ その1 (着想・構想・設計・準備)
では本編です。
さて,前回の記事にて,CFRPのフレームを作ることは技術的に可能のようだ,という事を書きましたが,もう一つ解決しなければならない事がありました。それは,
「フレームの精度」
です。正直な話をすると,自転車のフレームの精度なんて,数ミリメートルずれてようが,角度が数度ずれていようが大して問題ありません。組み立て段階でそもそも微妙にずれていたりするわけで,走行中はそのズレ分を人間が勝手に補正して普通に真っ直ぐ走ります。というかマスプロ製のフレームも所詮大量生産品なんで,歩留まりもあってバチバチに精度が出たフレームなんかそれほどないです。とはいうものの,今回自作して求めたいリカンベントは,安いマスプロ製よりも性能の高いCFRPフレームを作りたいわけで,フレームは精度良く組み立てたいわけです。というか趣味なので,納期などもありませんから,持ちうる技能で追い込める精度は追い込みたいわけです。
そうなると,必要になるものがあります。「治具」です。フレームに使うCFRPパイプやCFRPラグを,適切な位置で組み立てるための固定する台のようなものです。
上記記事でも言及していますが,「治具」と呼ばれる物,もしくは治具に相当する何かが無いと,フレームを組み立てるのに大変難儀します。しかもリカンベントという,1500mm近い長さの細長いフレームを組み立てる必要があるので,普通のロードバイクに使う治具は使い物になりません。
なので,作るしかないのです。(結局これも自作……)
どっちみち作るしかなくなりましたので,色々調べてみると,アルミの角フレームを使って治具を作ってらっしゃる方々がたくさんいました。押出成形のアルミ角パイプや鉄角パイプは,端面が平らで,角も綺麗に90度の直角にできていますので,それらを組み合わせることで治具を構成することが出来ます。(上記 Python Delta というリカンベントを ひきとりました 参照)
ですが,CFRPのフレームをしょっちゅう作るわけではないので,高価なアルミ角パイプを購入して治具を作るのは戸惑われました。(というか予算がなかった)
なので,治具ではなく,「定盤」を作ることにしました。とにかく平らな,ゆがみのない平面のある板の事です。この上でCFRPパイプを並べて接着すれば,心の出たフレームが作れると考えたわけです。
といっても,LiliumⅠの時では,ホームセンターに売ってある赤松集成材の分厚い板に,5mmのアルミ複合版を敷いたものの上でフレームを作るという,まぁまぁの精度しか無さそうなやり方で作りました。


これがその時の図ですが,これは何をしているのかというと,下に敷いている白い板が定盤代わりの板です。その白い板に,フレームを上から見た図をケガきます。その線に沿って,L型のスコヤやさしがね,直角に切りそろえた硬質の板をなど用いて,定盤に対して垂直に,各パイプ類が進行方向に対して平行に配置できるよう「治具」を構成します。こうすることで,ある程度精度が出せるという寸法です。

こんな感じで,定盤と水平にパイプなどを固定することもでき,ある程度の精度が担保できるというわけです。LiliumⅠでは,ただの木の板を使いましたが,さすがにちょっと心許なかったので,LiliumⅡではしっかりとした木製の定盤を作成しました。

できるだけまっすぐ木材を製材し,

裏側に補強のリブを接着,木工ビスを打ち込んで定盤を作ります。この定盤は手作りではありますが,自転車を作る程度には十分な平面が出ており,

同一直径のCFRPパイプを適切な角度で配置して定盤上で接着することで,

真っすぐに心の通ったフレームを作成することが可能となります。このフレームを,定盤にあらゆる向き,方向,裏表を変えて置き直しても,定盤とフレームの間に隙間はなく,ぴったりとくっ付きます。もし歪んでフレームが組み立てられていた場合,向きを変えたり裏返したりして定盤に置き直すと,フレームと定盤のどこかの間に隙間が空きます。が,今回この定盤上で作ったフレームは,どう置いても全く隙間が開かなかったので,パイプ同士の心はほぼ通っていると考えられます。仮にズレていたとしても,無視できる程度には歪みを抑えられていると考えられます。
大きなフレームだと大きな定盤が必要ですが,小さな部位であれば,ガラス板を定盤代わりに使うこともできます。市販のガラス板は思った以上に平らであり,特に机などに使われる強化ガラス製の板であれば,精度の高い定盤として扱っても差し支えありません。

このような感じです。ガラス面を定盤にしてBBシェルをカーボンパイプに接着しているところです。アルミのBBシェル端面はCNC加工なのかきれいに面が整えられていますので,パイプの中心線に対して正確に直角に切られていると考えられます。その端面をガラス面にくっつければ,BBシェル円柱は定盤代わりのガラスの板に対して,垂直に配置されていると見なして構わないわけです。そこに,ガラス面に対して平行にカーボンパイプを配置して接着すれば,BBシェルに対して直角にカーボンパイプを接着出来ていると考えて構わないわけです。力技のように見えますが,身近なもので比較的正確に精度を出すことができる良い方法です。上に重量物を置いているのは,外的要因で位置関係がずれない様にするためです。

精度がでているのか今更見るとちょっと怪しい気もしますが,これもスコヤやさしがねを使って定盤上に治具を構成し,リアエンドとリアトライアングルを組み立てているところです。シートステーに当たるパイプを木の板とクランプで挟んでいるのは,シートステーの平行度を担保するためです。

という事で,木製の手作り定盤とスコヤやさしがねを使った治具を使うことで,比較的精度の出たカーボンフレームを作り上げることが出来,無事に治具という難関は突破することが出来たわけです。
つづく。